→ ニコニコ動画版
次回英文(第7回)
The rabbit-hole went straight on like a tunnel for some way, and then dipped suddenly down, so suddenly that Alice had not a moment to think about stopping herself before she found herself falling down what seemed to be a very deep well.
メモ① 【発展】be to
“be動詞 to do-原形”という表現について補足をしておきます。これは「助動詞 do-原形」と似た働きをする表現で、様々な使い方があります。
まず、“to do-原形”が持つ「未来(の行為)に向かう」という基本性質を頭に入れましょう。そうすると、“be動詞 to do-原形”が「(これ[それ]から)~する(ことになっている)」という意味になることが理解できます。そこを核と捉え、様々な意味の広がりを見ていくとよいでしょう。では、辞書を引いてみます(読みやすいように、用例等は省略しています)。
□ be to do-原形
① ジーニアス
a. [予定]~することになっている(話し言葉ではwillの方がふつう)
b. [義務]~すべきだ(shouldの方がふつう)
c. [可能][通例否定文で]~できる(can[could]の方がふつう/to be doneを従える)
d [運命][通例過去時制で]~する運命になっている(wouldの方がふつう)
e. [意図][条件節で]~したいと思うなら(be going toの方がふつう/帰結節はmustなどが用いられる)
② ウィズダム
a. [予定]~する予定である(公式の予定・約束などで好まれる)
b. [義務・指示]~すべきである(公式の義務・指示などで好まれる/否定文は禁止を意味する)
c. [意図][条件節で]~したい、~するつもりである
d. [可能][通例否定文・条件節で]~できる(通例受身形不定詞と共に)
e. [運命][通例過去形で]~する運命だ
③ OALD
a. [be to do something] used to say what must or should be done
b. [be to do something] used to say what is arranged to happen
c. [be to do something] used to say what happened later
d. [be not, never, etc. to be done] used to say what could not or did not happen
(③の記号a~dは引用者によるものです。なお、ここで用いられている “used to say ~” は「~を言うのに使われる」ということを表しています。used to do-原形「以前~した[だった]」という表現ではないので注意しましょう)
これらは、おおむね同じような分類をしています。では、『アリス』本文に戻り、どれが当てはまるのかを考えてみましょう。
本文:In another moment down went Alice after it, never once considering how in the world she was to get out again.
文意を考えると「可能(~できる)」で取るのがよさそうですが、上記の各辞書での記述が気になります。「可能」を示す使い方について、これら3つの辞書は、ほぼ同じ説明をしています(→否定+toの後は「受身」)。ジーニアスは「c. 通例否定文で/to be doneを従える」、ウィズダムは「d. 通例否定文・条件節で/通例受身不定詞と共に」、OALDは「d. be not, never, etc. to be done」と記述しています。このような特徴は、『アリス』本文の使い方には当てはまらないようです。
次に、LDOCEを調べてみましょう。
④ LDOCE (下線は引用者)
[be to do something] 〈formal〉
a. used to talk about arrangements for the future
b. used to give an order or to tell someone about a rule
c. used to say or ask what someone should do or what should happen
d. used to ask how something can be done
How are we to get out of the present mess? (dの用例)
注目すべきは (d) です。「あることがどのようになされ得るのか[どうやったらできるのか]を尋ねるのに用いられる」とあります。本文の “consider(ing) how in the world she was to get out again” はこの用法がうまく当てはまりそうです。意味は「いったいどのようにして彼女が再び出られるのかを考える」となります。
①~③の辞書で説明されている「可能」とは、異なる種類の「可能(どうやったら可能なのかを尋ねるときに用いられる)」と考えると、『アリス』本文の “be動詞 to do-原形” はうまく解釈できそうです。