Alice was beginning to get very tired of sitting by her sister on the bank, and of having nothing to do: once or twice she had peeped into the book her sister was reading, but it had no pictures or conversations in it, ‘and what is the use of a book,’ thought Alice, ‘without pictures or conversations?’
今回の英文(第18回) Down, down, down. There was nothing else to do, so Alice soon began talking again. ‘Dinah’ll miss me very much to-night, I should think!’ (Dinah was the cat.)
次回の英文(第19回) ‘I hope they’ll remember her saucer of milk at tea-time. Dinah, my dear! I wish you were down here with me! There are no mice in the air, I’m afraid, but you might catch a bat, and that’s very like a mouse, you know. But do cats eat bats, I wonder?’
the の機能に関する文献は数多くあるが、そのほとんどは「定性」について論じたものである。英語の定性に関するこれまでの標準的な見解は、(ⅰ)聞き手の知っていること、(ⅱ)先行文脈から引き継いできたことに関する話し手の査定、すなわち、聞き手にそれとわかるかどうかという判断によってtheの有無が決まるというものである。言い換えると、theにはいろいろ用法があるが、すべての前提として「あなたにはどれかわかると思う」(I assume you know which one.)という話し手の判断がある。 安武知子 『コミュニケーションの英語学』 開拓社 2016 kindle版 第5章4 下線は引用者
“the” の使い方についてまず押さえるべきポイントは、 the の使用の際、「『あなた(=聞き手)にどれかわかると思う』という話し手の判断」があるという点です。 では、そのことをふまえて『アリス』本文に戻りましょう。 “the cat” に注目してください。
本文:‘Dinah’ll miss me very much to-night, I should think!’ (Dinah was the cat.)
この場面以前に「猫(cat)」は登場していませんので、すでに話題に出た cat を表して “the cat” となっているわけではありません。ここでは、書き手が文脈・状況から「どの猫なのかあなた(=読み手・聞き手)にわかる」と判断したため “the cat” を用いていると考えられます。
文脈を確認しましょう。「ダイナ(Dinah)は、今夜わたし(=アリス)がいなくて寂しく思う」ということから、「ダイナ」とはアリスの家にいる存在者である予測できます(この段階では、読み手はふつう、ダイナのことを「人」だと考えるでしょう)。この後に 「ダイナは cat」という情報が加えられています。読み手は、「ああ、ダイナというのは猫なのね」と思い、さらに「どの猫か?」といえば、「アリスの(家で)飼っている猫」だと考えることでしょう。そのため、ここでは the が用いられていると思われます。
今回の英文(第17回) ‘And what an ignorant little girl she’ll think me for asking! No, it’ll never do to ask: perhaps I shall see it written up somewhere.’
次回の英文(第18回) Down, down, down. There was nothing else to do, so Alice soon began talking again. ‘Dinah’ll miss me very much to-night, I should think!’ (Dinah was the cat.)
メモ① see
ここでは、see について見ていきます。 まずは、復習です。
□ see A -ed形 「Aが~されるのを見る[されるのが見える]」
本文:perhaps I shall see it written up somewhere. 訳例①(ひょっとすると、それがどこかに書かれているのを目にするかもしれない)
it は「(地球を突き抜けた先の)国の名前」で、 see の後の “it + written up” は受身の「状態」を示していると考えられます。write up A [A up]は、「(人が見えるように)Aを書く、Aを書いて掲示する」という意味なので、「それが書かれている[掲示してある]のを目にする」という意味になります。
では、今回の本題である see について見ていきましょう。 英語の「知覚」を示す表現(例:see ~)は、日本語の「存在」を示す表現に相当する場合があります。 次の例を見てください。英文の動詞は、find/found や see/saw ですが、日本語訳は「ある」や「いる」となっています。
a. I found it. あったぞ。
b. You will see a panda if you go to the zoo. 動物園にいけばパンダがいるよ。
c. Then I saw a big lady standing there. 太ったおばさんがいたの。
[LDOCE] curtsy, curtsey (verb) if a woman curtsies, she bends her knees with one foot in front of the other as a sign of respect for an important person
次回英文(第16回) ‘—but I shall have to ask them what the name of the country is, you know. Please, Ma’am, is this New Zealand? Or Australia?’ (and she tried to curtsey as she spoke—fancy curtseying as you’re falling through the air! Do you think you could manage it?)
次回英文(第15回) Presently she began again. ‘I wonder if I shall fall right through the earth! How funny it’ll seem to come out among the people that walk with their heads downwards! The antipathies, I think—’ (she was rather glad there was no one listening, this time, as it didn’t sound at all the right word)
次回英文(第14回) Presently she began again. ‘I wonder if I shall fall right through the earth! How funny it’ll seem to come out among the people that walk with their heads downwards! The antipathies, I think—’ (she was rather glad there was no one listening, this time, as it didn’t sound at all the right word)
“A of B” は通常、「AのB」ではなく、「BのA」という意味になります(例:the roof of the house「家の屋根」)。英語と日本語でA・Bの順番が逆になります(A of B/BのA)。上記の、“several things of this sort”も原則通り、「この種のいくつかのこと」という意味になります。では、以上をふまえて “sort(種類)” を辞書で引いてみましょう。
「この種の本」 this sort of books = books of this sort [ジーニアス]
注目したいのは、 “this sort of books(この種の本)” という言い方です。上で述べたように、 “A of B” は原則として、「BのA」という意味で、 “A” が「中心」で、 “of B” は「説明(≒~の)」の働きをするカタマリになります。しかし、 “this sort of books(この種の本)” では、Bにあたるbooksの方が「中心」になり、this sort of(この種の~)が「説明」の働きをしています。このように、 A of Bという型は、例外的にBが「中心」となる場合があるので注意が必要です。例をいくつかあげておきます。
1. an angel of a child (天使のようなかわいらしい子供) 2. a bit of fun (ちょっとした楽しみ) 3. an abundance of natural resources (豊富な天然資源) 4. a lot of books (多くの本) 5. a piece of paper (1枚の紙) 6. hundreds of people (数百人の人々) 1~2=リーダーズ英和辞典 3=ジーニアス英和大辞典 4~6=オーレックス英和辞典 (下線は引用者)
なお、『英語の語法研究・十章』(渡辺登士 大修館書店)の第5章(N2が主要語となる ‘N1 of N2’ 連語)には、上記のようなパターンの例が多く掲載されていて勉強になります。
次回英文(第13回) (for, you see, Alice had learnt several things of this sort in her lessons in the school-room, and though this was not a very good opportunity for showing off her knowledge, as there was no one to listen to her, still it was good practice to say it over) 次回に続く
(3) She was confused. She asked him, “What can I do?” [直接話法] (彼女は混乱していた。彼に「私には何ができるのでしょう」と尋ねた) (4) She was confused. She asked him what she could do. [間接話法] (彼女は混乱していた。自分には何ができるのかを彼に尋ねた) (5) She was confused. What could she do? [描出話法] (彼女は混乱していた。自分には何ができるのか、と) 綿貫陽 マーク・ピーターセン 『表現のための実践ロイヤル英文法』 旺文社 2006 p.516 (英文の番号・下線は引用者)
「直接話法」を用いた(3)では発言者である “she” のことばがそのままの形で示されています(=What can I do?)。一方、「間接話法」を用いた(4)では伝達者の立場から変更が加えられています(I → she)。さらに、語順は she could do(主語+述語動詞)となり、asked(過去形)に合わせてcan → couldと過去形に変更されています(=what she could do)。
では、今回のポイントである(5)の特徴を見ていきましょう。(3)、(4)とは異なり、ask(ed)のような広い意味での「伝える・言う」タイプの動詞なしで、疑問文が用いられています。また、(3)とは違って I → she、can → could と変更が加えられています。さらに、(4)とも異なり、could she doと疑問文の語順になっています(=What could she do?)。このような話法は「描出話法」や「自由間接話法」と呼ばれます(以下では「自由間接話法」という用語を用います)。
本文:‘Well!’ thought Alice to herself. (中略) (Which was very likely true.) Down, down, down. Would the fall never come to an end? ‘I wonder how many miles I’ve fallen by this time?’ she said aloud.
考えたいのは下線を引いた部分です。この “Would the fall never come to an end?” ですが、「地の文」と取れば、「語り手のことば」となります。一方、ここを「自由間接話法」として取って「アリスのことば」とみることもできるかもしれません。 私(動画製作者)は、Would the fall never come to an end? がアリスの心の中の声(自由間接話法)で、続く ‘I wonder ~’ の部分が実際に出した声であると読みました。それが正しい読みであるのかどうかわかりません(そもそも正誤が決定可能なのかわかりませんが)。
なお、上記引用の最後にある “aloud(声に出して)” には注意すべき使い方があります。
aloud[語法] 小説などでは登場人物の心の中にある本音と口に出して発言する建前がaloudを用いて対比されることがある: My boss showed me a painting done by his son. I thought, “How terrible!” but aloud I said, “He is a good painter.” 上司に息子の描いた絵を見せられた時、「なんて下手な絵なんだ」と思ったが、口に出した言葉は「絵がお上手なんですね」だった。 [ジーニアス]
次回英文(第12回) Down, down, down. Would the fall never come to an end? ‘I wonder how many miles I’ve fallen by this time?’ she said aloud. ‘I must be getting somewhere near the centre of the earth. Let me see: that would be four thousand miles down, I think—’ 次回に続く
brother(兄、弟)には「男性」、sister(姉、妹)には「女性」という性別に関する情報が含まれます。そのため対応する代名詞はそれぞれ、brother → he/his/him、sister → she/her/herとなります。一方、person, everybody, somebody などの名詞は、それ自体には性別の情報が含まれません。このタイプの名詞(単数)に対して、they/their/them が用いられることがあります。この場合、theyが「複数名詞」を指すという原則に反して、「単数名詞」を指すことになるので注意が必要です。上記のような名詞の代わりとして he or she, she or he などが用いられることもありますが、they が用いられることが多くなっているようです。
この they が指すものを、本文の前にある箇所から探しても見つかりません。ここでは「人々」という意味で they が用いられています。また、at home とあることから、ここでは一般的な「人々」ではなく、「アリスの家の人たち」を指していると考えられます。
メモ② it の使い方
it の基本的な使い方は、すでに話題に出た(前にある)単数名詞を指すのに用いるというものです。ただし、「後にあるもの」を指す場合もあります。
it [後に述べるものを先取りして、またこれから述べることを指して] これを、それは 1. I hate to say it, but he is not the right man for the job. (こんなことは言いたくないですが、彼はその仕事の適任者ではありません) 2. If you find it in the room, bring me the new stapler. (部屋で見つけたら、あの新しいホッチキスを持ってきてくれ) [ジーニアス] (番号、下線は引用者)
1の it は but 以下の内容を指しています。また、2の it は the new stapler(あの新しいホッチキス)を指しています。いずれも「後」にあるものを指していることを確認してください。
では、『アリス』本文に戻りましょう。
本文:I wouldn’t say anything about it, even if I fell off the top of the house!
ここでは用いられている it は、「前」にあるものを指すのではなく、「後」の even if に続く内容を指しています(=家のてっぺん[屋根]からの落下)。
動画内で説明した通り、 “Which was very likely true.” の部分は直前のアリスの発言(「たとえ屋根の上から落ちたって、何も言わない」)に対する「語り手」のコメントです。「そんな高いところから落ちたら、死んでしまって口もきけないでしょう」という語り手によるツッコミになっています。この箇所につけられた『詳注アリス』(マーティン・ガードナー)の注を見ておきましょう。
次回英文(第11回) ‘Well!’ thought Alice to herself. ‘After such a fall as this, I shall think nothing of tumbling down-stairs! How brave they’ll all think me at home! Why, I wouldn’t say anything about it, even if I fell off the top of the house!’ (Which was very likely true.)
次回英文(第10回) She took down a jar from one of the shelves as she passed: it was labeled ‘ORANGE MARMALADE,’ but to her great disappointment it was empty: she did not like to drop the jar, for fear of killing somebody underneath, so managed to put it into one of the cupboards as she fell past it.
ここでは、“make out what she was coming to” という表現について考えていきます。
本文:First, she tried to look down and make out what she was coming to, but it was too dark to see anything:
最初に、① make out と ② come to という表現について確認しておきます。
① make out [Collins COBUILD] (a) If you make something out, you manage with difficulty to see or hear it. (b) If you try to make something out, you try to understand it or decide whether or not it is true.
② come to (a) ~に来る、(聞き手の方)に行く (b) ~に着く (c) 〈事・状態・事態〉になる
例文b. Go straight until you come to a crossroads. (交差点に行き着くまでまっすぐ行きなさい)[ジーニアス] 例文c. We worry about what this country is coming to. (この国がどうなるか心配だ)[ジーニアス]
以下では、解釈(A)=①a+②b、解釈(B)=①b+②cという2つの読みを見ていきます。
解釈(A) ①make out=(a) “manage to see” + ②come to=(b) 「~に着く」
この解釈では、 “tried to make out what she was coming to” は「彼女[自分]がどこに着くのかを見よう[見きわめよう]とした」という意味になります。
なお、whatの意味は「何」ですが、場所(名詞)を問う場合、対応する日本語は「どこ」になります。
What’s the capital of Canada? (カナダの首都はどこですか) [ウィズダム]