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次回英文(第9回)
First, she tried to look down and make out what she was coming to, but it was too dark to see anything: then she looked at the sides of the well, and noticed that they were filled with cupboards and book-shelves: here and there she saw maps and pictures hung upon pegs.
メモ① like a tunnel
本文で、“like a tunnel”という「たとえ(直喩)」が用いられています。tunnelという語に注目して、『アリス』(1865年刊)が書かれた時代の英国について知識を増やしておきましょう。『アリス』の訳者でもある高山宏は次のように書いています。
問題は地下である。舟運推進のため運河を掘るうち、英国のトンネル掘進のノウハウが蓄積されていたが、何と言っても天才的技術者、M・I・ブルネル考案のシールド工法の登場が決定的であった。帯水地層にも、土圧による陥没の危険なく、いくらも穴があけられるこの方式のお陰で、テムズ川の河底トンネルの構想が可能となった。こうして1825年に構想されたテムズ河底トンネルは42年に完成、翌年から供用に付されている。
(中略)
そして先に述べたように、1863年、世界最初の地下鉄がパディントン~ファリンドン・ストリート間の約6キロを走行した。思えば、その少し前、1859年から始まったロンドンの下水道整備が65年をもって一段落している。
こうした〈下〉への強烈な関心を抜きにしては、たとえば『不思議の国のアリス』(1865)ひとつ書かれえなかった、とぼくは思う。
高山宏 『テクスト世紀末』 ポーラ文化研究所 1992 pp.213-214
メモ② the well
単語は知っているが英文の意味が取れない場合の原因の1つとして、英文で用いられている単語が、自分の知っている意味とは異なる意味で用いられているというケースがあります。今回、次のような英文が登場しました。
本文:the well was very deep
wellは「よく、上手に」という「副詞」でおなじみでしょう(例:She sings well. 彼女は歌がうまい)。しかし、本文のwellは “the well was ~” とtheが前に付いて、wasが後に続いていますので、「副詞」ではなく「名詞」と考えられます(主語になっています)。そこで、辞書でwellを調べると、名詞で「井戸」という意味が載っています。「井戸がとても深かった」となり、文の意味も通ります。
1つの単語には通常、複数の意味があるので注意が必要です。また、同じ綴りであっても、語源が別で、異なる意味を持つという場合もあります。語彙力向上に、こちらの動画のシリーズも活用してください → 【英単語プラス】 多義語・同形異義語
(なお、wellについては、第7回にa very deep well「とても深い井戸」という表現が登場しています)